本センターの准教授である森阪匡通らによる共著論文が学術誌 Mammal Review に掲載されました!

 

 Foraging and feeding ecology of Platanista: an integrative  review

  「ガンジスカワイルカの摂餌生態に関する統合的レビュー」 

 

視覚の使いにくい場所に棲息する動物は,それを補てんするために多用な感覚を用いる,あるいは進化させます.ヒマラヤ山脈からのたくさんの細かな土砂を携え流れてくるガンジス川は濁っており,視覚を使うことができないため,そこに棲息するガンジスカワイルカの視覚は退化しています.それでは,ガンジスカワイルカはどんな感覚器官を用いて,どのように餌を見つけているのでしょうか?

 

 様々な文献調査と予備的な観察,音の研究から,彼らはエサおよび自身の位置(水面,中層,水底)によって, 感覚器官を変えてエサを探して捕らえていると私たちは結論づけました.水面近くでは,遊泳性の魚たちが出す音を聞いており,中層では,だいたい20m先のエサを音(エコーロケーション)によって探し,水底では長い口の横にある電気受容器と思われるものを用いて,餌生物の出す微弱な電気信号をとらえていると考えています.ガンジスカワイルカは,体を横にして泳ぎ続けるサイドスイムという独特な泳ぎ方をすることがわかっています.また,餌のまわりをくるっと回りながら採餌するなど,その採餌方法も独特です.様々な感覚器官を用い,さらに独自の遊泳や採餌方法を生み出すことで,視覚の使えない環境に適応してきたのではないかと考えられます.

 

エコーロケーション:とても短い音を出して,その音が前方の物体に当たりはねかえってきた音(エコー)を聞くことで,その物体までの距離や材質といった情報を得る能力のこと.音でまわりを探索する能力といえる.陸上の哺乳類ではコウモリもこの能力をもつ.

 

論文Kelkar, N., Dey, S., Deshpande, K., Choudhary, SK., Dey, S., Morisaka, T., 2018. Foraging and feeding ecology of Plantanista: an integrative review. Mammal Review 48: 194-208.